こんにちは!
このブログの管理人ペン介です。
ここでは司法書士の私が、農地所有適格法人の要件について解説しています。
農業に興味がある人は是非最後まで読んでみて下さい!
前回は、農業を始めたい人が農地を買うための要件について解説しました。
誰でも農地を買うことができるわけではないことが分かったと思います。
では、法人はどうなのでしょうか?
どのような法人でも農地を所有することができるのでしょうか?
当然、そのようなことはありません。
法人も農地を所有することはできますが、一定の要件を満たした法人しか所有することはできません。
ここでは、農地の所有が認められる法人「農地所有適格法人」の要件について解説しています。
法人化を考えている農業従事者の人は是非参考にしてみて下さい。
農地の所有が認められる法人を「農地所有適格法人」といいます。
「農地所有適格法人」になるためには厳しい要件をクリアしなくてはいけません。
「農地所有適格法人」の要件とは?
全ての法人が農地を所有できる訳ではありません。
ある要件をクリアした農事組合法人、株式会社、持分会社のみ農地の所有が許されます。
農地所有が認められる法人を「農地所有適格法人」といいます。
ほほぅ…
「農地所有適格法人」にはどんな要件があるの??
「農地所有適格法人」になるための要件は以下のとおりです。
- 組織形態要件
- 事業要件
- 構成員要件
- 役員要件
以下で詳しく解説します!
「農地所有適格法人」になることができるのは、農事組合法人、株式会社、持分会社のみ
組織形態要件
「農地所有適格法人」になることができるのは、農事組合法人、株式会社(非公開会社)、持分会社のみです。
1.農事組合法人
農事組合法人とは、組合員の農業生産についての協業を図ることによりその共同の利益を増進することを目的とする法人のことです。
農事組合法人には、1号法人(農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業)と2号法人(農業の経営)がありますが、農地所有適格法人になることができるのは2号法人だけです。
2.株式会社(非公開会社)
非公開会社とは、全ての株式に譲渡制限を設けている株式会社のことです。
譲渡制限があることで、株主は株式の譲渡をするときに会社の承諾を得なくてはいけません。
3.持分会社
持分会社は株式会社と同じく会社法に定められた会社形態で、合同会社、合資会社、合名会社があります。
合同会社の出資者は、株式会社の株主と同じで有限責任です。
合名会社は、有限責任と無限責任の社員がいます。
合名会社は、無限責任社員のみです。
設立するなら、合同会社がオススメです。
⇒株式会社と合同会社の違いを知りたい人は、次の「「合同会社」と「株式会社」の違いを分かりやすく解説!」の記事を参考にして下さい。
「農地所有適格法人」にしたいなら、法人を設立するときにこれら以外の形態を選ばないようにしないといけません。
事業要件
法人の主たる事業が農業とその関連する事業である必要があります。
農業が主たる事業であるかは、判断の日を含む事業年度前の直近する3ヶ年におけるその農業の売上高が、当該3ヶ年の法人全体の売上高の過半を占めているかで判断されます。
農業以外の事業に力を入れすぎてはダメですね。
構成員要件
その法人が、株式会社であるときは、下記の株主の有する議決権の合計が総株主の議決権の過半を、持分会社であるときは下記の社員の数が社員の総数の過半を占めている必要があります。
- 法人に農地等の所有権又は使用収益権(賃借権や使用貸借権等)を提供した個人(これから許可申請する者も含む)
- 法人の行う農業に常時従事する者
- 法人に農作業の委託を行つている個人
- 地方公共団体、農業協同組合又は農業協同組合連合会
出資者に農業関係者がいなくてはいけないということですね。
役員要件
1.法人の常時従事者たる構成員(農事組合法人では組合員、株式会社では株主、持分会社では社員)が理事等(農事組合法人では理事、株式会社では取締役、持分会社では業務を執行する社員)の数の過半を占めていること。
2.法人の理事等(農事組合法人では理事、株式会社では取締役、持分会社では業務を執行する社員)又は重要な使用人(いずれも常時従事者に限る。)のうち、1人以上の者がその法人の行う農業に必要な農作業に1年間に60日以上従事すると認められるものであること。
法人の重要ポジションに1人も農業をやったことのある人がいないと、農業を主たる事業とする法人の運営は難しいですよね。
「農地所有適格法人」の要件を満たした後
法人が「農地所有適格法人」になるためにはたくさんの要件を満たさなきゃいけないんだなぁ。
「農地所有適格法人」になるためには、要件を満たした後に申請が必要?
「農地所有適格法人」になるために申請をする必要はありません。
「農地所有適格法人」は、あくまでも法人が農地を取得するための要件に過ぎないからです。
「農地所有適格法人」になるための申請は不要ですが、農事組合法人は設立後に届出が必要です。
また、「農地所有適格法人」は農地を取得した後、毎事業年度3ヶ月以内に農業委員会に報告書を提出しなくてはいけません。
法人を「農地所有適格法人」にするメリット・デメリット
たくさんの要件をクリアしてまで「農地所有適格法人」にするメリットを教えて!
「農地所有適格法人」のメリット・デメリットは下記のとおりです。
「農地所有適格法人」でなくても、農地を借りて農業をすることはできます。
上記のメリット・デメリットを考慮し、「農地所有適格法人」にするか検討しましょう!
「農地所有適格法人」になるか?
いかがでしたでしょうか?
「農地所有適格法人」になるための要件はなかなかハードルが高いです。
当然ですが、ずっと農業をメインでやる法人しか「農地所有適格法人」であり続けるのは難しいでしょう。
「農地所有適格法人」になるメリットは大きいですが、デメリットも大きいです。
平成21年の農地法改正により、「農地所有適格法人」でない法人も農地を借りることが出来るようになりました。
これにより、無理に「農地所有適格法人」の要件を満たし、農地を取得して農業をする必要はなくなりました。
ですので、法人の今後の方針等をよく考え、「農地所有適格法人」になって農地を取得して農業をするか、農地を借りて農業をするか決めましょう!
少しでも農業従事者の力になれたら嬉しいです。
では、これで終わります!
早速「農地所有適格法人」を設立したいと思った人は、次の「「株式会社」設立の流れを司法書士が分かりやすく解説!」、「「合同会社」って何?設立の流れを分かりやすく解説!」の記事を参考にしてみて下さい。
「農地所有適格法人」について学びたい人には上の本が分かりやすくてオススメです。
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